プロゲステロン補充療法の基礎知識~妊娠を支える、もうひとつのサポート~
前回は「黄体機能不全」についてお話ししました。黄体機能不全があると、せっかく受精しても着床がうまくいかないことがあります。では、足りないホルモンをどう補えばいいのでしょうか――今回は「プロゲステロン補充療法」について詳しく解説します。
不妊治療の一環として行われる「プロゲステロン補充療法」。名前は聞いたことがあっても、「なぜ必要なの?」「いつ行うの?」と疑問に思われる方も多いかもしれません。
プロゲステロンとは「黄体ホルモン」とも呼ばれ、排卵後の女性の体で自然に分泌されるホルモンです。このホルモンは子宮内膜をやわらかく整え、受精卵が着床しやすい環境をつくる働きがあります。さらに、着床後も妊娠を継続するために重要な役割を果たします。
ところが体の状態や年齢、ホルモンバランスの乱れなどによって、排卵後のプロゲステロン分泌が十分でない場合があります。このようなときに補助的にホルモンを外から補うのが「プロゲステロン補充療法」です。特に次のような場合に、補充療法が積極的に行われます。
・人工授精(AIH)後に、妊娠しやすい環境を保つため
・体外受精(IVF)や胚移植(ET)で、排卵が誘発され自然なホルモン分泌が不足しがちな場合
・黄体機能不全(黄体ホルモンが十分に分泌されない状態)と診断された場合
補充の方法には、膣座薬・経口薬・注射などがあり、通院状況や副作用の有無によって選択されます。どの方法であっても、目的は「着床しやすい子宮環境を整え、妊娠を安定させる」ことにあります。
この補充療法は、目に見える効果が分かりづらいため、不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、妊娠の初期を支える「縁の下の力持ち」のような存在であり、多くの治療において必要不可欠なサポートなのです。
治療中に処方された場合は、指示通りのタイミングで使用し続けることが大切です。疑問や不安があるときは、遠慮なく医師や看護師に相談しましょう。
妊娠の成立を左右する黄体ホルモン。不足することで起きる「黄体機能不全」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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